大人の引きこもりは平成25年の内閣府の調査によると、20~24歳が17万人,25~29歳が18万人,30~34歳が18万人(家事、通学、無業)いるとのこと。
合わせて43万人。
「ふだんは家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」者を含む広義のひきこもりは,69.6万人と内閣府は推計しています。
しかし、上記以上の年齢で引きこもりの場合や、調査の数字に表れていない引きこもりもいることを考慮すると、それ以上大人の引きこもりがいると考えられます。
なぜこんなにもたくさんの大人の引きこもりがいるのでしょうか?
大人の引きこもりの原因と対処法について考えてみたいと思います。
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目次
大人の引きこもりの原因
内閣府の調査による大人の引きこもりのきっかけは下記の通りです。
- 職場になじめなかった 23.7%
- 病気 23.7%
- 就職活動がうまくいかなかった 20.3%
- 不登校 11.9%
- 人間関係がうまくいかなかった 11.9%
- 大学になじめなかった 6.8%
- 受験に失敗した 1.7%
- その他・無回答 28.8%
上記の引きこもりのきっかけをみるとわかるように、原因としては、病気を除くと共通して挫折ということが見えてきます。
また不登校だからといってそのまま大人になっても引きこもりになるということではなく大人になってからの挫折が原因で引きこもりになっていることがわかると思います。
挫折というのは誰でも程度の差はあっても経験をするものです。
その挫折を乗り越える力があるかどうかに引きこもりの原因があるといえます。
もう少し深く原因を探っていきましょう。
引きこもりになるかならないかの差はトラブルや、困難な場面でそれを解決したり、乗り越えられるかどうかの違いということになりますが、どうしてその差が生まれてしまうのでしょうか?
大人の引きこもりの真の原因とはなんでしょうか?
これは不登校の子どもにも共通する原因といえます。
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大人の引きこもりの真の原因
大きく分けて大人の引きこもりの原因は本人の気質と、親の対処や対応、育った環境であると私は考えています。
どのような親の対処や対応が大人の引きこもりの原因となるのでしょうか?
過干渉
親がなんでも先回りして、失敗を回避してしまう。
以前は私もしていた対処の1つで親ならやりがちな対処ですね。
息子が困らないようにと、折り畳み傘をランドセルに忍ばせておく。
宿題はやったのか、提出物は出したのかと声をかけ、やっていなければやらせる。
なかには試験勉強を見てあげたり、教科書にマーキングまでする親もいます。
そして成績が悪ければそれの対処を考え勉強のプログラムを考える親。
志望校も親が決め、その試験傾向を親が調べ、対策をたて対処をする。
程度の差はあっても過干渉をする親はたくさんいます。
もちろん過干渉が原因となり、過干渉をしている親の子供がすべて不登校や大人になってから引きこもりになるとは限りません。
しかし、実際不登校や引きこもり相談をうけていて原因となっていると感じることが多いのも事実なのです。
過干渉をしている親のもと育った子供は大人になるまで失敗や挫折をほとんど経験してこないということです。
何かトラブルがあっても親が対処してしまい、子供はダメージを受けずに育ち大人になってします。
そして大人になってからは親も子供のトラブルを回避することができず、初めてに近い挫折やトラブルに対処できない。
挫折に対処する力が備わっていない。
そのため大人になってからの挫折が原因となり引きこもりになってしまうというわけです。
つまり過干渉が原因で引きこもりになったと言っても過言ではないでしょう。
威圧的な親の態度
威圧的な親というのは、親の理想を押し付けたり、子供の意思を尊重せずに、親の価値観で子供のためにはこれが良いと、レールを敷いたりする親で過干渉ともかぶりますが、それを語気を強めたり表情で伝え子供が逆らえないようにする親です。
親が白といえば黒のものも白となる。そんな親の対処の仕方が引きこもりの原因となることがあります。
なかには暴言、暴力をふるい、子供を親の意思通りにさせようとする親もいて、その対応や対処の仕方が原因となり引きこもりになることがあります。
なぜこの対処が大人の引きこもりの原因になるかと言えば、子供からしたらいつ怒られるかわからない。
そのため親の顔色を窺う習慣がついてしまいます。
すると大人になってからも人の顔色を窺い、自分の言いたいことが言えず、自分の気持ちを押し殺してしまいます。
大人になってから意思表示ができないと、職場では評価が下がり、トラブルの対処の仕方もわからないうえに人の顔色を窺うため何も提示ができない。
すると場合によってはリストラにあったり、叱責を受けたり、して自己否定してしまいます。
このためきっかけは職場でのトラブルや人間関係であっても引きこもりの真の原因は親の対処の仕方ということになるのです。
また一方で子供の頃から大人になるまでの間ずっと、自分の気持ちを押し殺しているため気づかぬうちにストレスが溜まり、うつなどの病気になってしまうこともあります。
この場合にも親の対処がうつなどの病気を誘発し、大人の引きこもりになってしまう原因となってしまっているということになります。
自己肯定感が低い
不登校も引きこもりも共通した原因は自己肯定感が低いということ。
生まれながらの気質もありますが、これもまた親のそれまでの対処が原因ということも多いのです。
前述のように過干渉や威圧的に対処してきた親の元に育つと失敗という経験が少なく、大人になってから初めて挫折を経験するということがあります。
すると、いままでは親が失敗を回避してきたからうまくいっていたこともうまくいかなくなり、自信を失います。
ましてや引きこもりになると、引きこもりに対して罪悪感があるものの、動けず、どうやって引きこもりを脱出してよいかもわからず葛藤を続け、さらに自己否定をして自分を追い込んでしまいます。
この他にも褒めない親、やって当然、できて当然という対処をしてきた親の元に育つと、自己肯定感は育まれません。
終わりのないゴールを目指すようなものです。
実際に医大に入り医師になるほどの実力をもった方でも常に自信がなく、無気力になってしまい引きこもりになってしまったという方もいるほどです。
親も子供が1できると、2を目指せと言い、次は3とどんどんエスカレートするため世の中全体でみればとても良い成績であったとしても親が褒めずに常に上を目指すように言うため自信がもてないわけです。
ありのままの自分を受け入れられない。
自己否定してしまう。そんな状態では引きこもりになってしまいます。
繊細な心
不登校や引きこもりになる人に共通しているのは繊細で敏感だということです。
これも生まれながらの気質もあるでしょうが、多くは大人になるまでの育った環境、つまり親の対処の仕方が原因で引きこもりなっているともいえます。
前述の威圧的対処をする親のもとに育てば、親を怒らせないように常にアンテナを張り、人の顔色を窺い、相手の表情が少しでも曇ると自分がそうさせてしまったのではないかと不安になり、自信がなくなる。
これは言葉で言われなくても表情や雰囲気から敏感に察して判断をするため、相手は何も言っていないのにと思っていても眉間にしわがよっていたり、怒っている表情をとらえ本人が思い込んでしまうのです。
このため同じ出来事がおきても引きこもりになる人は人一倍傷ついたり、気にして悩み心が疲弊してしまいます。
行き過ぎると不安障害になってしまうこともあります。
大人になるまでの成長過程にトラウマとなるような恐怖体験などがあると、対人恐怖症などに発展するケースもあり、電車に乗れない、会社に行けないなどとなり、結果引きこもりになることもあります。
こうしてみていくと成長過程における親の対処の仕方が原因で、子供が不登校や引きこもりになってしまう可能性があるということがわかると思います。
では原因がわかったところで、大人になって引きこもりになったら、どのように対処していけばよいのでしょうか?
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大人の引きこもりの対処法~家族や周囲ができること~
受容する
引きこもりであることを否定しない。
「大人になって引きこもるなんて、何を考えてるの?」
「いい大人が何をしているんだ」
「早く仕事探しなさい」
「いつまで家にいるんだ」
こんな対処の仕方は引きこもり本人を否定していることになりますから、よくありません。
引きこもりを受け入れること。今は動けないんだ、葛藤しているんだ、と本人に理解を示してあげるのが良いでしょう。
「せめてアルバイトだけでも・・」そんな風に願い言うこともあるかもしれませんが、これは条件付きの愛情ということになります。
アルバイトするあなたは良い子、アルバイトもせず大人になっても引きこもっているあなたは悪い子というメッセージになってしまうのです。
無条件の愛情を注ぎ受け入れることが大切です。
大人になって引きこもっている子供を善悪で判断するのでなく、いるだけでいいというイメージをもってください。
子供が生まれてくるときにはそう願ったはずです。
自己肯定感を上げる対処をする
引きこもった原因が親の対応や、気質だとしても、大人になってからであっても周囲の対応で自己肯定感を高め、引きこもりを脱出できるようにできます。
どのような取り組みをするかというと、少なくとも本人のすることを否定しない対処をすること
ましてや人格否定につながる発言はご法度です。
どうしても意見をしたいときはIメッセージを使います。
IメッセージというのはI=私が主語になる文章にするのです。
例えば「Aにすべきじゃない」というと、あなたが選んだそれではなく、あなたはAを選ぶべきというメッセージが込められます。
しかし私ならこっちだなといういう言い方であれば、私はこれがいいと思うけど、あなたはそっちを選ぶのね。
ということになります。
基本的には本人の意思を尊重する取り組みをしていきます。
またさりげなく褒めるという繰り返しも自己肯定感を高めるのにはとても有効です。
やって当たり前というのでなく、何かやったら「すごい」「気がきく」「ありがとう」など言葉をかけるとよいと思います。
即効性はありませんが、少しずつの積み重ねが重要です。
自分でも昔を振り返ってみてください。何気ない周囲の一言でやる気になったり、自信につながったことがありませんか?
大人になってからでもそういう対処はとても印象深く覚えているものです。
その逆もしかり。引きこもりになるまでの過程において、なにげない一言など、人の対処の仕方で、自信を失っていることもあります。
自己肯定感の喪失も大人になるまでの少しずつの積み重ねで、あるとき限界がきたはずです。
この積み重ねで引きこもり脱出を図りましょう。
一度話合いの場を設ける
大人の引きこもりの場合には親を恨んだり、親のせいだと思っているケースも多くあります。
詳しくはこちらの記事を参考にしていただきたいのですが、親が責任を感じたり、また引きこもり当人が親のせいだと言っているケースの場合には、話をして、場合によっては謝罪するとよいでしょう。
本人も親のせいにしていても仕方がないと思いながらも親に怒りを感じ動けずにいるケースもあります。
その場合には本人が感情を吐き出し、親が謝罪をすることで、気持ちに区切りをつけ、前に進むことができることもあります。
親が子供にしていることは子供のためと思ってしていることですが、それが子供のためになっていないこともあるのです。
親だから謝れないなんていうへんなプライドは捨て大人になっても引きこもっている子供を救いましょう。
きっかけ・居場所作り
大人の引きこもりは早期解決が求められます。
国の引きこもり支援も限りがあります。
まずは心のケアが必要ですが、自己肯定感が高まり、以前より良い状況になったと感じたり、本人から前向きな発言があれば、そこがチャンスになりうると思います。
そのタイミングで、全く外に出ない引きこもりであれば、まずは外に出ることを目標にする。
いままでもコンビニなど特定のところに出かけられていたのであれば、毎日外にでることを日課とし、さらにアルバイトなどに取り組むように話をしてみるというのもよいでしょう。
いきなり外にも出られなかった引きこもりに就職という無茶はせず小さなステップを積み重ねていくようなプランをたてましょう。
親と全く話もできず部屋に引きこもったままであれば第三者の介入があるほうがスムーズにいくこともあります。
人には居場所が必要です。その居場所は家と外=社会に必要です。
家でも引きこもりを非難する発言等あればそこは快適な居場所にはなりません。
家の中を快適な居場所、心安らげる居場所にする必要があります。
そのうえで社会においての居場所ができるのが理想です。
居場所がないと不登校や引きこもりから抜け出せないかもの記事はこちら
いきなり働くのが難しくてもまずは引きこもり支援センターや、団体を利用してみてもよいでしょう。
下記記事も参考にして対処してみてください。
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まとめ
大人の引きこもりは早期解決が必要です。
親も年老いていき、国の引きこもり支援も限りがあるからです。
いきなり就職させるというゴールを目指すのでなく、まずは本人の自己肯定感を高め、少しずつハードルを上げていくことをおすすめします。
まだどこにも相談ができていないという方は、ぜひ引きこもり支援団体や保健所に相談をしてみてください。
親向けの対応についてのアドバイスをしております。
よろしければお問い合わせフォームより、ご連絡ください。ご案内をお送りいたします。
プロフィールより相談者の感想がご覧いただけます。
こちらの記事もよろしければご覧ください。
[quads id=4]
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